INTERVIEW
AMU UMU STORY
ひし形金網の新しい在り方を生み出すプロジェクト“AMU UMU”。
AMU UMUが誕生するに至った経緯や、このブランドに対する思いを、共和鋼業株式会社の森永耕治氏、プロダクトデザイナーの倉本仁氏が語りました。
INTERVIEW
AMU UMU STORY
ひし形金網の新しい在り方を生み出すプロジェクト“AMU UMU”。
AMU UMUが誕生するに至った経緯や、このブランドに対する思いを、共和鋼業株式会社の森永耕治氏、プロダクトデザイナーの倉本仁氏が語りました。
倉本さんと森永さんの出会いのきっかけは何ですか?
森永
「HIGASHIOSAKA FACTORies(東大阪ファクトリーズ)」という東大阪市のモノづくりを行う町工場とプロダクトデザイナーをマッチングする取り組みでした。本当にたまたまなんですけど、募集の案内を目にして、おもしろそうだなと思って説明会に参加したんです。
倉本
私はこのプロジェクトを運営している友人からの声をかけてもらって参加をしました。「東大阪」というキーワードに惹かれたんですよね。日本のモノづくりを支えるコアな街ですから。
左:森永耕治氏 / 共和鋼業株式会社 代表取締役
右:倉本仁氏 / JIN KURAMOTO STUDIO プロダクトデザイナー
倉本さんが共和鋼業のひし形金網とのコラボを決めた理由は何ですか?
倉本
素直に「ひし形金網ってなんだ?」っていう興味です(笑)。プロジェクトには、他にも電線や板金、鋳造を扱う企業さんが参加されていたんですが、ひし形金網はこれまでの創作活動のなかで、まったく繋がりのなかったジャンル。今回のチャンスを逃したら、もうひし形金網の職人さんと出会うチャンスは巡ってこないんじゃないかと思ってオファーをしました。
そして、初めてお会いした時に、森永社長の秘めた熱意というか、自らチャンスを作って発信しようとする意思の強さを感じて、すぐに一緒に作品づくりをするイメージが湧いていました。
森永
私は、工場でモノづくりをしていると、なかなか倉本さんのようなプロダクトデザイナーと知り合う機会は少ないので、最初にヒアリングというか顔合わせをした時は「みんなオシャレだなぁ…。何を話そう…」って緊張していました(笑)。
倉本
一緒に作品の制作をすることが決まり、ひし形金網がどのように作られているのか、まずは工場見学に行かせていただきました。機械で一気にガシャーンと力づくで製造しているかと思いきや、全然イメージと違っていて、本当に金網を編んでいくんですよ。この工程がブランド名にも繋がっていくわけなのですが。
森永
ひし形金網って、公園のフェンスや落石ネットなどに身近にたくさん使われているけど、普段はあまり気付かれない控えめな存在なんですよね。さらには安心安全が大前提のお堅いポジション。これをデザイナーさんたちがどのように作品に取り入れて、表現されるのかとても興味がありました。
倉本
森永社長とディスカッションしていくうちに、ひし形金網が持っている「公共性」にも可能性を感じました。公園や役所など、いわゆるパブリックな場所にちょっとオシャレなベンチやパーテーションがあってもいいんじゃないかとか、遊び要素を取り入れた遊具もおもしろいなとか。いろんなアイディアが浮かびながらも、初めて扱う素材ですから、正直こちらも手探りの状態で、提案用のスケッチをいつも以上にたくさん用意しました。
森永
スケッチ、たくさんありましたね(笑)。
これまで自社作品としてイスやテーブルなどを作ってみたり、デザイナーさんが企画する展示会に参加してみたり、ひし形金網の新しい可能性を模索しながらも、トライして挫折した経験もあるし、正直こちらもどうしたらいいのかわからない。漠然としたイメージを伝えながら、進めていくうちに徐々に方向性やコンセプトが固まってきた感じですね。今回制作をした作品だけでなく、先々を見据えた方針も含めて。プロダクトとして、こんなに深く1社と向き合って取り組んだことは初めてでした。
AMU UMUからリリースする初めての作品としてベンチを選んだ理由は?
倉本
先ほどお話しした公共性という話に通じるところがあるんですが、ひし形金網の特性を生かした実用性に長けた作品にしたかったんです。
森永
ひし形金網は特に用途が限定されているわけではないけど、本来は座るものではない。しかし、実際に座ってみると適度にたわみがあって座り心地がいいんですよ。しかも汚れにくいし。
倉本
AMU UMUの『主役』は、職人さんの技術が詰まったひし形金網ですから、デザイン性だけでなく機能性と汎用性を備えた実現性の高い製品であることを意識しました。それにこのベンチは、場所や用途に合わせて様々な展開が期待できるのではないかと考えています。例えば背もたれやテーブルのパーツを組み合わせたりすることもできますし。
それに、巷で多用されているメッシュフェンスと比べると、ひし形金網ってどこか懐かしさや温もりを感じるところがあるんですよね。長年受け継がれてきた技術に加えて、そういう部分も表現していけたらと考えています。
森永
私は、このAMU UMUというブランドを通じて、もしかしたら時間はかかるかもしれませんが、ひし形金網の可能性や価値を高めていくことができると信じています。これまでのひし形金網のイメージを覆す、ワクワクするおもしろいものを作っていきたいなと。まずは今回、第一号の作品が世にでることにより、AMU UMUが最初の一歩を踏み出した感じですね!